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RO小説外伝 - pray
外伝第1章 01話
「なー、ジャンよー。どーやったらフィリアは俺になびくと思う?」
教会の裏手にある芝生の上に寝転びながらプリーストの男は、隣に座っている者に尋ねた。
「そーだねー…。まずはこんなところでサボってないで、ちゃんと仕事でもしている所でも見せた方が好感度は上がると思うよ」
「そーは言ってもなー、俺の仕事って机に座っての作業ばっかだからだるくてだるくて…」
そう言って男は吸っていたタバコの紫煙を空に向けてフーッと吐いた。
「それに聖職者なら聖職者らしく、タバコなんて吸うのやめた方がいいと思うけど?」
「別に神様はタバコを吸っちゃいけないとは言ってないぞ?」
「そりゃそうだけど、フィリアはタバコは嫌いって言っていたよ」
「……吸いかけだけど、お前吸うか?」
「……僕、未成年にタバコを勧めるプリーストって初めて見たよ」
ジャンは結局タバコは受け取らず、そのままプリーストは最後までタバコを吸いつづけた。
タバコを吸い終わってもう一本吸おうかとプリーストが悩んでいると、ジャンの方から話し掛けてきた。
「ところでさぁ、なんでそーゆー大人がするような相談を子供の僕にしてくるの?」
「……だってよぉ~他の奴らに相談すると決まって、そんな事を考えていないで仕事しろとか神に祈りなさい!っていうんだぜ?」
「それが聖職者なんだからあたりまえじゃん…」
「でもよぉ~」
「…エミリオって聖職者に向いてないんじゃないの?」
「……そんな事はないはずだぞ?」
「今の一瞬の沈黙が全てを語っていると思うんだけど…」
『………』
ジャンとエミリオ、二人の間に微妙な沈黙が漂ったが、最初にその沈黙を破ったのは不良プリースト事エミリオだった。
「そろそろ時間か…。それじゃ、戻るかなっと」
そう言って、エミリオは立ち上がって背中や尻についた埃を払い教会の中に戻って行こうとした。
「時間って…、お祈りの時間はまだ先だよ?」
「分かってないなぁ、ジャン? さっきアコライト志望のノービスの子が巡礼から戻ってきたんだぞ?」
「それは、知ってるけど…」
ジャンが言うとエミリオはニヤリと笑い、
「転職する時は巡礼から戻ってきて、神父様から話を聞いた後にアコライトになるって決めてから着替えるんだぜ?」
「…まさか、覗きに行くの?」
「当たり前だろ」
先ほどの質問の時とは違い、考える事も躊躇することなくエミリオは答えた。
「…女子更衣室って覗けるような窓ってあったっけ?」
教会の構造を思い出しながらジャンは女子更衣室を覗けるような場所を頭の中で考えたが、そんな場所は思いつかなかった。
「ククククク、任せておけ。我に秘策有り、だ」
自信たっぷりに言いながらエミリオは、教会の中に入って行き通路を曲がっていった。
「ばれたら他のプリースト達から半殺しにあうよ?」
エミリオを追いかけながらジャンが言い、通路を曲がるとそこにはエミリオの姿はもうなかった。一瞬だけ見失っただけなのにエミリオの姿はどこにも見当たらない。
通路は長く近くにドアがあるが、開ければ音はする。しかしドアを開いた音はしなかった。走ったとしても姿が見えなくなる前にジャンの方が曲がるのが早いだろう。
「……消えた?……まさかね」
そう言ってジャンは、孤児院にある自分の部屋に戻っていった。
「ここが更衣室だから、アコライトの服に着替えてね」
女子更衣室の中では先輩アコライトに連れてこられたノービスの子が居た。
「ここまでの道のりも大変だったかもしれないけど、これからの道のりも大変だから変わらずに頑張ってね」
「はい!ありがとうございます!」
そう言って先輩アコライトは、ノービスの子にアコライトの服を渡した。受け取ったノービスの子は、嬉しそうに着替えを始めた。その姿を嬉しそうに見つめながら先輩アコライトは後輩になる子に話し掛けた。
「あなたはどうしてアコライトになろうと思ったの?」
「なんでって…、単に怪我をした人を治してあげたいって思っただけですけど」
そう言って照れながら答え服に袖を通した時、何か物音がしたような気がした。
「……?」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
怪訝そうに聞いてきた先輩に笑いながら答えて、アコライトになる子は着替えを続けた。すると先輩が何かを思いついたように、手を合わせて聞いてきた。
「そうだわ、後輩ができたお祝いにいろいろと魔法を使ってあげましょうか?」
「え?」
「これからあなたが覚えていくかもしれない魔法だから見ておいた方がいいわよ?」
そう言って先輩はクスクス笑いながら、呪文を唱え始めた。呪文を唱える先輩の姿を、ドキドキしながら後輩は着替えるのも中断し見つめていた。
「聖なる輝き、神の光よ、この世を照らしたまえ、ルアフ!」
呪文を唱え終わった瞬間、先輩の周りを青白く輝く球体が回り始めた。聖なる光で辺りを照らし、隠れているモノも見つける事ができるルアフと言う魔法だ。
「ぐぇ」
その瞬間、更衣室の入り口の方から蛙を踏み潰した時のような声が聞こえてきた。
『?』
「何かしら?」
そう言って先輩は、光を付き従えたまま更衣室の出口の方に歩いていった。出口から顔を出し通路を覗いてみるが人影は無い。すぐ先に曲がり角があるが、別に誰かが走って行くような音もしなかった。
「……一体なんだったのかしら?」
「さあ…?」
先輩はそのまま室内に戻り、後輩に魔法の説明をした。
「この魔法はルアフと言ってテレポート、ワープポータルを覚えるのに必要な魔法だから覚えておくと便利よ。他にも隠れている魔物などを見つけるのにも使えるから忘れないでね」
「はい!」
元気良く後輩が答えた後も先輩が覚えている魔法のお披露目は暫く続いた。
「くそ~…、まさかあそこでルアフを使うとは思わなかったな……。念のために移動力増加をかけておいて正解だったぜ…」
エミリオはクローキングという技を使い姿を消して更衣室まで近づき、入り口から顔を出し室内を覗いていたのだ。しかし、先輩アコライトがルアフの呪文を唱え始めた瞬間、危険を察知し逃げ出したのだ。
ルアフの魔法で姿を照らし出されたと同時に体に衝撃が走り声を出してしまったが、あらかじめ速度増加の魔法を自分にかけておいた為、姿をあらわした瞬間から歩いて通路の曲がり角まで歩いたのだ。速度増加の魔法は、対象の肉体に働きかけ運動神経を一時的に活性化させる魔法である。この魔法の力によりエミリオは普段以上の速さで歩いて逃げたのだ。
体の痛む個所を擦りながら仕事に戻ろうと部屋に入ったら、ルティエに出かけていたフィリアが戻って来ていた。他の者は外に出ているらしく、部屋にはフィリアしか居なかった。
部屋に入ってきた自分にフィリアは気付いていないらしく、これはチャンスと思い近くの席に座り話しかけようとした瞬間、フィリアが机をドン!と勢いよく叩いた。
「ど、どうしたんだいきなり」
いつも静かでおとなしいフィリアが机を勢い良く叩いたので、エミリオは驚いて目をパチパチとさせた。
「あ、なんでもないの、ごめんなさいね」
フィリアは落ち着いて満面の笑みで答えたが、良い子のフィリアにしてはおかしいと思い、エミリオは聞いてみるかと思ってスッとフィリアの腰に手を回し、耳元でそっとと囁いた。
「何かあったの?なんなら俺が相談にのるけど」
するとフィリアは先ほどと同じように満面の笑みを浮かべ答えた。
「別になんでもないし、相談するような事も何もないわよ?」
そう言ってフィリアはエミリオの相手をする事も無く部屋から出て行った。
「あいつはホントに全然なびかないよなー。…ま、だからこそ落とし甲斐があるんだが」
部屋から出て行くフィリアの後姿を見つめながら、ニヤニヤと笑いながら謎の闘争心を燃やすエミリオだけが部屋に残された。
それからエミリオはつまらない机仕事を片付けていたが、外から戻ってきた同僚達に、エミリオが真面目に仕事をしているなんて雨が降るんじゃないのか?などと好き勝手に言われたが、普段が普段なだけに反論もできるはずも無く、フィリアを口説くチャンスも無いまま夕食を迎えた。
夕食を取り終わった後、自室で仕事道具を整理していると扉を誰かがトントンと叩いた。サッと道具を片付けると扉に向かっていつも通りに声をかけた。
「鍵ならかかってないから、開けてもいいですよー」
「私です。今から騎士団に行く準備をしてください」
扉を開け入ってきたのはエミリオの上司でもあり教会の責任者でもある神父だった。
「なんだって今から騎士団なんかに行かなくちゃならないんですか。もうすぐ入浴時間だってのに…」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も?」
思わず本音が出てしまったが、神父は何か考え事をしていたらしくエミリオの後半の言葉には気がついていない様子だった。
「ルティエの元ペコナイトの集団が襲われ、重傷者が沢山いるそうなので治療に来て欲しいとの事です。孤児院の方はフィリアに任せていますし、教会の夜の部の者は外せないので、手が空いている私とエミリオで出向く事にしたわけですが」
「ルティエって…、ハティーにでも襲われたんすか?」
「いえ、魔物ではないそうです…」
神父はまた考えるように口を閉ざした。なにやら訳有りだなと思いエミリオは会話をさっさと終わらせようとした。
「…分かりました。犯罪者とは言え無意味に死なせても寝覚めが悪いですからね。俺の準備は特にないんで、すぐにでも行けますが」
「では、さっそく行きましょう」
そして夜の街を二人急ぎ騎士団へと向かった。
騎士団に運び込まれたペコナイト達は、一つの部屋に怪我の程度も関係なくまとめてられていた。騎士団にも医療に携わるものもいるが、それは長期的に治す場合に使われる。その点、聖職者達の癒しの奇跡はすぐに効果を表すので、このように多くの怪我人がいる場合は助けを頼まれるのだ。
「おまたせしました。では、私はこちらの人から癒していきます。エミリオは反対側からお願いします」
「りょーかい」
騎士団の者達は、これで自分達は多少楽ができる思ったが、それは神父の手伝いをした者達だけだった。神父の方は模範的な聖職者らしく親切丁寧に指示と癒しをしていたが…。
エミリオの方は騎士団の者達にとって、聖職者と言うイメージが根底から崩されるような状況だった。
「おら!これぐらいならヒール使う必要ないから唾でもつけてそっち転がしとけ!」
「骨が折れて痛いだぁ?折れてなきゃ痛くないんだから当たり前の事言うな!添え木して固定しときゃ骨が以前より強く引っ付くから、ヒールの必要なし!」
「ボケっと暇そうにつっ立ってんじゃねぇ!その辺で包帯替えにゃならん奴がいるからとっとと替えとけ!」
「痛いからさっさとヒールしろだぁ?治してもらう立場ってのを考えろ!このボケ!つー訳でお前にゃヒール無し!」
「おい!痛いからって暴れんな!お前もそっちしっかり抑えとけ!変にくっついたらお前らの責任だからな!」
と、見る怪我人全てこの調子。見かねた騎士団の者が神父になんとかするように言ってくれと進言したが、神父は首を振った。
「良く見ていればわかりますが、彼は本当に癒しが必要な者にはヒールを使っていますよ」
そう言われ注意して見てみると、確かに重傷の者にはヒールを使っている。言い方は乱暴だが怪我に対する指示も的確だった。その反面、癒しが必要に無いと判断された者の扱いは酷いが…。
「……やはり口調の事は後で言っておきますか。世間でのイメージというのも大事ですしね…」
重傷者を優先的に癒していってもまだまだ怪我人は多く残っており、重傷者の治療が一段楽したのは太陽が真上に昇った頃だった。不眠不休で癒しを行っていた神父とエミリオは、騎士団の者の薦めで一旦休憩を取るべく別の部屋で休んでいた。
「なんとか、重傷者の方は終わりましたね。まだまだ軽傷の方達が残っていますけど、教会の方から交替の者を呼んだのでエミリオはその者に代わって休んでください」
「俺は若いから徹夜するのは平気ですけど、神父様の方こそ年寄りなんだから休んだ方がいいんじゃないですか?」
「…注意しても口の悪さは一向に直りませんね」
「これはもとからの性格なんですからほっといてください。…しっかし、これだけの人数を一人も殺さず無力化するなんてかなりの腕のアサシンすね」
「…そうですね」
「で、神父様には心当たりがあるんすか?これをやってのける奴を」
「いえ…」
ここに来る前も考えているように見えたが、どうやらペコナイト達を無力化した者に心当たりがあるようだ。そして、治療中に聞いた凄腕のアサシンのことで悩んでいる事も見てとれた。
無理矢理聞いてもいいが何しろ自分の上司だ、怒らせた後のことを考えて今は聞くのはやめておいた方がいいとエミリオは思った。
「……まぁ神父様も大変だから考えがまとまってからでいーっすよ」
「…頭を悩ませる原因の一つが良く言えますね」
「………すんません」
神父の手痛い反撃に謝るしかないエミリオだったが、その時部屋の外から騎士団の者の叫び声が聞こえてきた。
「大変です!城下街のメインストリートでテロが起きました!神父様たちもお疲れの所申し訳ありませんが、救急の手伝いをお願いします!」
「わかりました、エミリオ行きますよ」
「はいはいっと。…ったく、どこの馬鹿だ、テロなんか起こしやがって!」
騎士団の者達と一緒に城下町のメインストリートに出て辺りを見渡せば、古木の枝によって召還された魔物達によって襲われた怪我人達で溢れかえっていた。
露店を開いていた商人達以外にも買い物に来ていた町の人達もかなりの被害を受けているようだ。
「1班はまだ魔物が潜んでいないか周囲を捜索、発見したら直ちに殲滅せよ!2,3斑は周囲の怪我人の救助だ!怪我の重い者から司祭様達に癒しをかけてもらえ!」
大声で叫ぶ騎士団の隊長の声を聞きながら、神父とエミリオは怪我人が沢山集まっているテロの中心地らしい場所についた。エミリオはすぐさま怪我の重い者から癒しを施していく。
すると通りりを挟んだ向こう側にフィリアとその友人のカイルがいるのが見えた。神父がフィリア達の方へ向かっていくが、怪我人の治療に集中しているためエミリオには何を話しているか分からない。しかも、自分を先に治してくれと言ってくる軽傷の者達がエミリオの感にさわる。
犯罪者達には遠慮をしていなかったが、市民には優しく接しなければ神父に後で何を言われるか分からないため我慢していたが、こうも何も考えずに言ってくると我慢にも限界が来る。
「っだーー!!自分から自分からってうっせぇぞ!分かったから、軽い怪我人はそっちに集まれ!一気に癒すから座って待ってろ!」
突然怒鳴られ、慌ててエミリオの指差す所に集まる軽傷者達。それを見てエミリオは懐から青い石を取り出し握り締め呪文を唱えだす。
「優しき力、命の息吹、癒しの泉よ。サンクチュアリ!」
呪文を唱え終わった瞬間、集まった人々の周りを暖かい光が包み込み痛む負傷箇所が見る見るうちに癒されていく。それと同時にエミリオが左手に握り締めていた青い宝石、ブルージェムストーンが砕け散り、青い砂となって指の隙間から零れ落ちていった。
癒された人々は驚きと喜びの声を上げていたが、エミリオの声によりそれどころではない事に気がついた。
「動けるようになったら、動けない怪我人をさっさとここに連れて来い!意識が無い者を見つけたら俺を呼んで、絶対にそこから動かすな!分かったらさっさと動け!」
エミリオに怒鳴られ、慌てて動き始める元怪我人達。それを確認してから動けない周囲の怪我人から癒そうとしたら神父が戻ってきた。
「エミリオ、至急教会に戻ってアコライト・プリースト達を集めてきて下さい。怪我人の数は不明ですが、かなりの人数が巻き込まれているようですから早くお願いしますね」
どうやら先程の怒鳴った事には気がついていなかったようだ。
「はいはいっと。すぐ行って応援を連れて戻って来るんでここの癒し、お願いしますね」
安心してエミリオは、自分自身に速度増加の呪文を唱え急ぎ教会に向かおうとしたその背中に神父の声がかかる。
「犯罪者の方々とは違うのですから、市民の皆さんには口調を気をつけるようにと先ほど言ったはずですが…」
その声が聞こえなかったかのように急いでエミリオはその場から走り去っていった。
次の日、エミリオが起きたのは太陽が昇って真上に近づいた頃だった。
昨日のテロの怪我人達の治療が終わった後に、神父から臨時の休みをもらったからだ。でなければ朝が早い聖職者がこんなに遅くまで寝ていられるはずがない。
とりあえず、着替えてから今日はどうするか決めようと思いエミリオはベッドから起き上がった。
それから暫くして外に出たエミリオは、街をぼーっと歩いていた。何か行く所がある訳でもなく歩いていたら、休みの日にいつもいる場所に自然と足が進んでいた。
「あ、不良プリーストだ」
「だーれが不良プリーストだ」
エミリオが向かった場所には既に先客がいて、それはエミリオも知っている人達だった。エミリオに対して不良と言ったのも知っているブラックスミスだ。
「サングラスかけてタバコ咥えてれば十分不良に見えるって」
「レイナ、人を外見だけで判断するのはよくないぞ?」
そうエミリオは反論しながら話し掛けてきたレイナと言うブラックスミスの近くに座る。
「そうですよー。こう見えてもエミリオさんってやさしいじゃないですかー」
「……こう見えても?」
「何か変な事言いました?」
「…いや、何も…」
「でも、先輩って聖職者にしては考え方とか口調とか…」
「…サラス君?先輩に対してそんな口を聞いてもいいのかなぁ~?お前の秘密を言っちゃうぞぉ~?」
「先輩、すいませんでした。だから言わないで下さいよぉ」
エミリオに助け舟のようなものを出したのはマジシャンのミリィ、サラスと呼ばれたのはエミリオの後輩のアコライトだ。エミリオがいじわるく言うと、サラスは慌てて謝った。その光景を見て、エミリオとレイナ、ミリィは楽しそうに笑った。
「ねぇ、エミリオさん、秘密って何ですか?」
「あ?ああ、それはだな…」
「せ、先輩!そんな事より今日はどうしたんですか!?いつもなら仕事の時間なのにこんな所にいていいんですか!?」
「ん?あぁ、単に一昨日から寝ないで働いていたから臨時で休みもらったんだよ」
「一昨日からって…何かあったんですか?」
なんとか話題を変える事が出来てほっとしながらサラスが聞いてきた。
「一昨日の夜は騎士団の方で元ペコナイトの馬鹿供を治してたんだよ」
元ペコナイトと聞いて反応したのはレイナだった。
「元ペコナイトって…ルティエの?」
「そ、たった一人のアサシンにぶちのめされて、動けないでいるのを発見されてそのまま捕まったのよ。んで、重傷の奴らとかを神父と一緒に徹夜で治していたわけ」
「は~強いんですねぇ、そのアサシン…」
「んで昨日の昼からが一番大変だった…」
昨日の事を思い出してエミリオはがっくりと項垂れた。
「昨日は何があったんですか?」
ミリィもサラスも分からないようできょとんとして聞いてくるいる。
「えっとね、昨日メインストリートで大規模なテロがあったのよ」
「なんだお前ら知らなかったのか…」
レイナの説明にミリィとサラスは二人顔を合わせて笑いながら頭をかいた。
「いやぁ…今日狩りから帰って来たばかりでして…」
「今回はどこに行ってたんだ?」
「聖カピトーリナ修道院の近くでマンドラゴラをメインに狩っていました」
「…んじゃ、ミリィが焼いているのをサラスは見てばかりって所か?」
「僕だってちゃんと狩りましたよ!エクリプスだって倒したんですから!」
「ミリィ、ホント?」
「なんだってミリィに聞くんですか、僕の言う事が信じられないんですか?」
「え~とぉ…。サラス君は自分にヒールばかりかけていて、結局あたしの方が多くダメージを与えていたような…」
エミリオはニヤリと笑ってサラスの方を見た。見られた当のサラスは、しまったと言う感じで後ずさりしてエミリオと距離を取る。
「いや、だって、その、ミリィの方に行かないようにするには、自分が盾にならないといけないじゃないですか」
「いやぁ、言い訳は聞きたくないなぁ、サラス君。君、この前、ミリィより沢山狩ってくるって俺に言ったよねぇ」
エミリオがニヤニヤ笑いながらサラスの方に近づいていけば、サラスは近づかれた分だけ後ずさる。
「そして、出来なかった時の事も約束したよねぇ」
「えーと、あの、だからですね…」
近づくエミリオ、後ずさるサラス。二人の間の緊張を破ったのはサラスの方だった。
「……すいませんでした!」
大声で謝りながらサラスはその場から走って逃げ出そうとした。
「そう簡単に逃がすかよ!」
逃げ出すサラスにエミリオは即座に速度減少の魔法をかける。名前からも分かるとおり、速度増加の正反対の効果をもつ魔法だ。
「げ!」
逃げ出そうとしたサラスは、自分にかけられた魔法に驚き足をもつれさせ転倒してしまった。転倒したサラスにゆくりと近づくエミリオ、その顔は逆光で表情がうまく見えない。しかし、聞こえてくる声からして笑っていることだけは確かなようだ。
「そう簡単に俺から逃げ出せると思ったのかなぁ、サラス君?」
「いえ、あの、その…」
転倒したため下から見上げる形になったエミリオは、今のサラスにとって悪魔以外の生物に見えなかった。
「さぁ~て、どうしてくれようかなぁ~?」
「ふ、二人とも見てないで助けてくださいよぉ!」
困り果てたサラスは、こっちを見て笑いあっているミリィとレイナに助けを求めた。
「まぁまぁ、エミリオもそれぐらいにしてあげれば」
「そうですよー。別にサラス君が弱い訳じゃなくて、魔法の方が強いんですからー」
「……ミリィ」
「あたし変な事言いました?」
「いや、なんでもない…」
ミリィの発言で三人ともドッと疲れたようにへたり込んだ。
「まぁ、なんだ。暫く会えてなかったから、みんな元気そうで良かったよ」
「そうだねぇ、エミリオもあっちの仕事が忙しかったみたいで休みが余り無かったようだし」
「ですよねぇ…先輩デスクワーク苦手だからすぐ溜めるんですよ」
「………うるせ」
そのまま四人は、最近の自分の状況や意味も無い話で盛り上がり時間がたつのも忘れて話に花を咲かせていった。
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