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RO小説本編 - karma

RO小説本編01話

「それでは、確かにお渡ししましたので」
 神父に頼まれてルティエまで届け物をしたプリーストのフィリアは久々の雪景色を楽しもうと、ワープポータルで首都プロンテラに直行するのではなく、町の外に出てゆっくりと雪の感覚を楽しんでいた。
「プロンテラには四季が無いから、ここにこないと雪が見れないのよね」
 教会の仕事に追われる日々を送るフィリアにとって、たまの外出は仕事ではあるが同時に息抜きでもあった。
神に仕える身として仕事をすること自体は嫌ではないのだが、さすがに篭もりきりになると外に出たいと思うのが人の心というもの。
朝ということもあり、人気がほとんど無い。降り積もる雪が更に音を隠して、吐き出す白い息と、時折覗く常葉樹の緑以外は視界に入らない。
「キレイ・・・・・・」
 ほう、とため息をついた時、前方でかすかに金属音が聞こえた気がした。
「何・・・・・・?」
 加えて獣の雄叫びのような声、氷の折れる音、耳を塞ぎたくなるような肉の切れる音―――
フィリアは思わず音のする方向へ駆け出した。
 

キィィン、ザシュッ
息を切らして駆けつけたその場には、大きな氷の狼と凶暴化した熊の群れがうごめいていた。
 

―――氷の魔獣ハティー。

一定時間になると出現するその魔獣はその魔力によって凶暴化した熊のサスカッチを数匹従えて、生きとし生ける者全てを凍て付く氷に変えていく。
「ハティーの出現時刻にかち合うなんて・・・・・・どうしよう」
 基本的にプリーストは祈りによって人を癒し、潜在能力を引き出す術を主とする。
フィリアは完全支援のプリーストを目指して学んできた為、戦闘能力は無いに等しい。ましてや戦闘職でも倒すのが難しいと言われる上級魔獣を相手にするなどもってのほかだ。
「ワープポータルで帰るにしても、詠唱音で気づかれるだろうし・・・・・・」
 その時、ズーンと音を立てて巨体のサスカッチが3匹倒れ、辺りに粉雪を撒き散らした。目を凝らすと、その靄の中で別のサスカッチに向かっていく者が見えた。
「アサシン・・・・・・それもたった一人で!?」
 アサシン―――暗殺者と呼ばれるその者たちはアサシンギルドに所属しスピードを生かした戦闘方法を得意とする戦闘職である。
表向きは魔物討伐等となっているが、政治的隠密行動及び殺人も行っているという噂が絶たない職でもある。
数ある職の中で、最も忌み嫌われているアサシン。それはフィリアにとっても例外ではなかった。
アサシンなど、聖職者であるプリーストとは最も相容れない存在であると。
だが、あの氷の魔獣ハティーをたった一人で相手にするという事は、最強と言われるプロンテラ騎士団のナイトをもってしても無理であろう。プリーストとして、このままあのアサシンを見殺しには出来ない。
意を決してフィリアは飛び出した。
 

「彼の者に癒しを!ヒール!!」
 日頃から常に鍛錬を怠らないフィリアの魔力は既に最高レベルに達している。これで彼の体力のほとんどを回復できたはずだ。
「聖なる神の息吹を!ブレッシング!!」
 補助魔法ブレッシングはかけられた者の潜在能力を引き出す。
アサシンは一瞬こちらに視線を向け、残りのサスカッチを次々と倒していく。
フィリアがほっと気を緩めた瞬間、彼女に巨大な影が覆い被さった。いつの間にかハティーがフィリアのすぐ傍まで来ていたのだ。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
 牙を剥くハティー。もうだめだと蹲ったその時、キィィンと高い音が鳴り響き、ハティーの牙はフィリアに食らいつくことなく折れて雪の中に埋もれた。
恐る恐る顔を上げると、そこには先程のアサシンが武器カタールをハティーの口に突っ込み、抑えているところだった。
「どけ!!」
 その言葉にフィリアが慌てて離れると、彼はカタールをハティーにくわえさせたまま回転し、背中に飛び乗り左手のカタールを深々と突き立てた。
ガァァァァッ!
吼えながらその巨体を振り回すハティーから飛び降りながら、更に何度も刃を突き立て、着地と同時にまた跳躍し赤黒く光る目に、そして額に突き立てた。
グォァァァァァァァ
凄まじい咆哮と共にハティーの体はボロボロと崩れ去り、氷の山と化した。
そしてそこにハティーの魂のように現れた白銀に光る水属性の氷柱カタールを拾い上げると、アサシンは雪の中に座り込んだフィリアの傍にゆっくりと歩み寄ってきた。
黒髪に紫の瞳、そして右目を覆う眼帯をつけた長身の男。見たところ、大した傷は見当たらない。
「無事でしたのね。よかっ・・・・・・」
「余計なお世話だ」
 フィリアの言葉に被るように、アサシンは低い声で呟いた。
「お前の支援など受けなくても俺は一人でアイツを殺れた。勝手な手出しをして勝手に襲われやがって」
 確かに注意を怠りハティーに襲われかけたのは事実だが、アサシンの無愛想な態度にフィリアもムッとした。
「私はただ、一人では大変だと思って助けてあげようと・・・・・・」
「お前達プリーストはいつもそうだ。恩着せがましく助けて“あげた”だと?フザケるな。支援がないと何も出来ない他の奴らと一緒にするんじゃねぇ」
それだけ言うと、アサシンは視線を逸らし遠くを見た。まるでもうフィリアの事など眼中に無いかのように。
「もう・・・・・・あったまきた!あなたは」
 立ち上がって文句を言おうとしたその時、突然アサシンが彼女の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
いきなり男の胸に抱かれる形になったフィリアは、顔を真っ赤にして叫ぼうとした。
―――が

 

ドガッ、ドガガガガッ

すぐ後ろを轟音が響き、猛スピードで駆け抜けていくペコペコの群れ。よく見るとナイトの格好をした者が乗っている。
さっきまで自分がいた場所がペコペコに無残に踏み荒らされた様を見て、フィリアは愕然とした。
「な・・・・・・なんなのアレは・・・・・・っ」
「最近良くこの辺りを荒らしている暴走ペコナイト達だ。騎士団を辞めたか逃げ出したか・・・そういう奴等がああやって盗賊まがいの事をしているのさ」
「そんな・・・・・・」
 それは騎士団の凛々しいナイトしか見たことが無いフィリアにとってかなりの衝撃であり、先程の恐怖が蘇ってきてへなへなと座り込んだ。
「わかったか。ここは世間知らずのお嬢ちゃんが来るような所じゃねぇ。とっとと帰ってマリア様のスカートの中に隠れてな」
 そう言って蝶の羽を取り出し、呪文を唱えると彼の姿はフッと消えた。きっとアサシンギルドにでも帰ったのだろう。
「・・・・・・なんなのよもう・・・・・・散々だわ」
 うつむき、零れそうになった涙を拭くと、彼女もまたワープポータルを唱えてプロンテラへと戻っていった。

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